その人は不思議な人だった。
30代か。
彼は、いつもパジャマみたいな恰好で外を歩く。
そして、そのパジャマがいつも同じもの。
だから、ヨレヨレ。
着るものが他にないのか、
彼のマンションの部屋のベランダには、いつも、そのパジャマが干してあった。
彼は、挨拶をいっさいしない。
近所の人だろうと、同じマンションの人だろうと、
相手が誰であろうと。
向こうから挨拶をされても、いっさい返さない。
じっとこちらをにらみつけるだけ。
私はある場所で彼とよく一緒になるので、
何度か彼に挨拶をしてみてから、それに気づいた。
私は、この人は相手にしちゃいけないんだな、と思った。
彼は、在宅での仕事をしているようで(仕事をしているとすれば)、平日の昼間も外をウロチョロしていた。
なので、彼とは道端などでもよく会ったが、私は彼が近づいてくると、彼のことに気付かないふりをして、無視した。
だから、彼と会うと私はとてもいやな気持ちになった。
彼の住むマンションには、
ごみ出しのルールをいっさい無視してごみをだす人がいた。
ペットボトルも缶も燃えるごみもすべて一緒に出す人。
また、生ごみで、廊下やエレベータを汚す人もいた。
その話を聞いた時、私は勝手に、それは彼の仕業なんじゃないかな、と思っていた。
そのことに対しては何の証拠もなかったが、
でも、日頃常識のない行動をしている彼が、ごみだしのルールをきちんと守れるようには思えなかった。
たぶん彼は
「ごみの分別なんて、こっちは金払ってんだから、管理人がやれ」というような考えの持ち主だったと思う。
そんな彼の部屋がリフォームにかかる、と聞いて、ちょっと驚いた。
どうやら、彼は、引越したようだった。
ふうん。。。
これもまた甚だ失礼な推測だが、
私は「バチがあたったんだな…」と思った。
たぶん、このご時世、生活が苦しくて、ローンを支払えなくなったんだろう、と。
勝手にそう思っていた。
彼が引っ越してから、すぐに新しい人が越してくるようで、彼の部屋のリフォームが始まった。
彼の部屋にリフォーム会社が入り、彼の部屋からたくさんのごみが出てきた。
私がたまたま、そのリフォーム会社が出したごみの前を通った時、びっくりした。
その中にトイレの便器があったのだが、おそらくそれは今まで一度も洗ったことのない便器で、カビや汚れでボロボロになっていたのだ。
そこらの公衆トイレの方がまだきれいだ。
トイレなんて出したいものを出すもの。
掃除をする必要なんてない…。
いかにも彼の考えそうなことだと思った。
私はその便器を見て思った。
やっばりな。
こんなことしてるから、罰があたったんだ。
なんの罰かは分からない。
強いて言うなら、非常識の罰。
人としてちゃんと生きてない罰。
が、これらはすべて私の推測で、
実は彼はとっ〜ても金もちの資産家だったりしたら、それはそれで笑えるのだが(笑)。
私は、人の日常の行動はすべて、その人の幸せや試練につながっている、と思っている。
少なくとも私には、
普段の生活があんな彼が、幸せになることなんて理解できなかった…。
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